失語症

失語症の「重い」「軽い」を考える

Hbtkms

失語症というのは、脳卒中をはじめとした病気やケガなどが原因で大脳の言語を司る部分がダメージを受けることで、「言葉」を操る作業が、それまでの健康な状態に比べて難しくなることを言います。

当然、損傷部位や損傷範囲によって、症状は様々。また、当事者のそれまでの言語環境によっても、さまざまな変化があるので、一様には語れません。

ただ「聞く」「話す」「読む」「書く」、あるいは「計算する」「考える」といった、言葉をつかった作業が思うようにこなせない場面が増えるので、日常的にストレスや苛立ちがついてまわるやっかいな症状でもあります。

そんな中、ある時、失語症が比較的軽い当事者さんと話をしていた時に、こんなことを言われました。

「失語症が軽くなったねとか、もうすっかり普通じゃん、とか言われると、やっぱりわかってもらえないんだなと思って辛い」

私たちは、失語症当事者の方と話をすると、つい「すらすら喋れているか」とか「言ったことがちゃんと伝わっているか」とか、そういう情報伝達の出口のところに気が向きます。

しかし、一見すらすら喋れているように見えるその内面で起こっている葛藤やエネルギー消費は、当事者にとっては大きな負担に感じておられる場合があります。

発症前の状態に、何とか近づけようと努力した経過もあります。

そして、今現在、すらすらと喋って会話についていくために、通常の10倍パワーを使っているということがあることに、私たちは重々心を寄せる必要があるように思います。

言語聴覚士や、失語症意思疎通支援者といった、直接当事者さんたちの会話を支援する役割である私たちこそ、そうした目に見えない苦労や苦悩を、見落としてはいけないなと感じたのでした。

ABOUT ME
ひびたかまさ
ひびたかまさ
言語聴覚士/公認心理師/旅行介助士/臨床宗教師
生活の隣にいるSTを目指して、2022年に寺子屋ことだまを始める。
ことばのリハビリが主な仕事。
記事URLをコピーしました