ことだま日誌

失語症の方が外出するときに気をつけたいこと|工夫と支援制度まとめ

Hbtkms

失語症のある方は、身体に障害がなくても外出時に困る場面が少なくありません。
本人だけでなく、ご家族や支援者の方も知っておくことで外出が安心しやすくなります。

👉 今回の内容はYouTube動画でも解説しています。ぜひこちらからご覧ください。

外出時によくある困りごと

① 聞き取りにくい

失語症では、発症前に比べて多かれ少なかれ、「聞き取る力」が低下します。
さらに雑音、騒音、相手がマスクをしているなど、聞き取りをジャマする要素がが重なると、会話の理解はより難しくなります。
例えばショッピングセンターや駅、公園などでは多くの音が同時に流れ、自分に必要な音だけを選んで聞き取るのが難しい、という声をよく聞きます。

参考「カクテルパーティ効果」

パーティ会場のように、多くの人がそれぞれに話をしているような場所でも、自分の話し相手の言葉を、選択的に聞き取りやすくする脳機能。

② 自分のペースで話せない

病院やリハビリの場では、周囲が話すペースを合わせてくれます。

しかし社会に出ると、店員が忙しそうにしていたり、後ろに人が並んでいたりして焦ったり、ちゃんと話せるか、ちゃんと伝わるか不安だったりで、、さらに言葉が出にくくなることがあります。

③ 思った以上に疲れやすい

失語症や高次脳機能障害では体の体力とは別に「頭の体力」が落ちていることが多いです。

外出で多くの刺激を受けると、知らず知らずのうちに脳が疲れてしまいます。短時間の外出でも「帰ってきたらぐったり」ということが少なくありません。

④ 自分のペースで動けない

人がたくさん行き来する駅やショッピングセンターなどでは、人の動きは不規則です。自分自身が、人や物にぶつからないように動きをコントロールしなければいけません。

たとえば、エスカレーター。
機械が無機質に淡々と動いているペースに、自分の歩行のタイミングを合わせるという作業は、思った以上に戸惑いを感じるという方が多くいらっしゃいます。

工夫と対処法

メモ帳や文字アプリ

相手に書いてもらう、あるいは音声認識アプリで文字化してもらうと理解の助けになります。

タブレットは文字の大きさを調整したり、情報をタブレット内に集約できるのでとても便利ですが、使い慣れないとかえって不便というのが難点かもしれません。

逆に、紙などのアナログ媒体は、かさばるという点が欠点ですが、取り扱いは楽で、書いたらビリっと破って渡せるなど、気楽に使えます。

馴染みのお店やモバイルオーダー

「選ぶ」という行為は、脳のエネルギーを大変消費します。

例えば、旅先で美味しいものを食べるという事は、大切な目的地の1つになるでしょうが、それとは別に「休憩拠点」を設けておくことがポイント。そして、そういう休憩ポイントでは、いわゆる「ルーチン」なオーダーで済ませられることが大切です。

マクドナルドやスターバックスなどは、全国どこでも同じメニューで利用できますし、お店のマニュアルもしっかりしているので、逆に安心だったりします。

モバイルオーダーは、プリペイドやクレジット登録が必要な場合もあるので、その辺りは注意が必要ですが、自分でじっくり選べるというのはありがたいです。
※スターバックスのアプリは、「スタンプ」機能があって、使った店舗が記録していってくれます。ので、旅の記録として残したり、コレクションして楽しめたりします。

持っておくと役立つグッズ
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帽子・サングラス・耳栓(またはノイズキャンセリングイヤホン)

周囲の刺激を遮断し、休憩時に頭や目、耳を休められます。

ただし休憩するということが目的なので、移動中や作業中は、外しておくと良いでしょう。事故に注意して使ってください。

動画の中で使っているのはこちら☟


Apple AirPods 4ワイヤレスイヤホン、Bluetooth 5.3、アクティブノイズ キャンセリング搭載、適応型オーディオ、外部音取り込みモード、パーソナライズされた空間オーディオ、USB-C充電ケース、ワイヤレス充電、H2チップ、防塵性能と耐汗耐水性能、「探す」対応、Qi充電

わたしが使っているのは、AppleのAir Pods。ノイズキャンセリング機能は強力で、かなりの騒音をシャットアウトしてくれます。が、その分周りの音は聞こえません。
電話の声が聞き取りやすいのは、かなりありがたいです。

折りたたみ椅子

軽量、コンパクトさ
・組み立てやすさ

など、ご自身に合ったものを選びましょう。もちろん、座面の高さや耐久性にも注意が必要です。

街中を歩いている時、順番待ちをしている時など、必ずしも座る場所が備わっているとは限りません。気軽に腰掛けられるものがあると、いざという時便利です。

動画の中で使っているのはこちら☟


【所ジョージの世田谷ベース掲載】 折りたたみ椅子 軽量コンパクトチェア 持ち運び [超軽300g×スマホ2台分のポケットサイズ] (2, ブラック 2ついり)

軽さは申し分なし。
組み立て、片付けは、少しコツが要りますが、ちょっと練習すればパパっと作業できるのではないかと。片手での作業は、ちょっと難しいかもしれません。

座面は低めです。立ち上がりに不安がある人は、もう少し高めになる椅子が良さそうです。

自己紹介カード

「失語症があります」「こういう配慮をお願いします」と書いたカードを用意しておくと安心です。名刺サイズに折って使うとプライバシーも守れます。緊急連絡先を入れておくのもおすすめです。

(PDFダウンロードはこちら)

外出を支える制度

「失語症者向け意思疎通支援事業」という制度があります。
買い物や病院での診察など、コミュニケーションに不安があるときに、ボランティアが同行してサポートしてくれます。

各都道府県の言語聴覚士会に相談できます。岐阜県では「寺子屋ことだま」も事務局を担当していますので、ぜひお気軽にご相談ください。

(岐阜県失語症者向け意思疎通支援事業HPはこちら)

まとめ

  • 失語症の方の外出には「聞き取り」「話すペース」「疲れやすさ」「動きにくさ」といった困りごとがある
  • 工夫や便利グッズを取り入れることで安心して外出できる
  • 制度を活用することで支援を受けながら外出が可能になる

👉 次回は「失語症と注意障害」について解説します。

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ABOUT ME
ひびたかまさ
ひびたかまさ
言語聴覚士/公認心理師/旅行介助士/臨床宗教師
生活の隣にいるSTを目指して、2022年に寺子屋ことだまを始める。
ことばのリハビリが主な仕事。
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