ことだま日誌

高次脳機能に対するリハビリ

Hbtkms

失語症以外にも、脳の損傷で起こる様々な症状があります。それらを全部ひっくるめて、「高次脳機能障害」と言います。

で、言語に対するリハビリの相談とは別に、この「高次脳機能障害」にどう向き合っていったらよいのかという質問をよく受けます。さらに、家でどんなことをトレーニングしたらよいでしょう?と。。

今回は、そんな「高次脳機能障害」に対するリハビリの考え方をご紹介します。

生活そのものが、リハビリになる!

極論、結論的には「生活そのものがリハビリになる」というのが私の考えです。

たとえば、リハビリ入院を1ヵ月延長して、訓練室での高次脳機能に関するリハビリを受けるよりは、自宅をはじめ、生活環境の中に身を置くことの方が、100倍リハビリになるということです。

一言に「高次脳機能障害」といっても、様々な内容のものがありますが、脳機能はとても精密で複雑なので、例えば「記憶」に関する部分『だけ』を抜き出して練習するということはとても難しいのです。

不可能、ということではありません。私たちリハビリの療法士が訓練のメニューを考える時には、どのメニューが、どの高次脳機能を的にしているのかをよくよく考えます。

が、それはなぜかというと、「できる」「できない」の判定をする時に、本来訓練の目標としたい高次脳機能以外の影響を考慮するためです。

少し、分かりにくいことかもしれませんが、、、

例えば、「記憶」の練習をしたくて、トランプの「神経衰弱」を行うとします。

でも、その時に、実は「半側空間無視」といって、左右のどちらかの認識が、きわめて苦手な症状を合併しているとしたら、神経衰弱で間違えた時に、記憶力の問題なのか、空間認識の問題なのか、ということがごっちゃになってしまいます。

ので、訓練室のメニューでは、あれこれと考慮して、かつ時間に制約があるので、効率的に進めたいという事もあるので、ぐっと的を絞れるようなメニューになることが多いです。

「これは、何のリハビリになるだろう?」と考えてみる

逆に言えば。
いろいろな作業、いろいろなイベントに取り組むことは、いろいろな高次脳機能を複合的に含んでいるので、極端なことを言えば、何をやっても、多かれ少なかれ、どこかは影響している!ということです。(とても、極端なことを言っています。)

なので、
考え方としては

「記憶力のリハビリをするには、何をやったらいいだろう?」

ではなくて、

「この作業は、どんな高次脳機能を駆使する作業だろう?」

と考えてみていただいて、例えば「記憶力も必要だな」ということであれば、その作業を日々のトレーニングとして取り入れていけば良い!ということです。

では、たとえばこんな作業は、どんな高次脳機能が必要でしょうか?

…今回は、福岡に行ったお土産として買ってきたガンプラに挑戦。

(だし、作業してくれたのは私ではなく、小5の息子クンです。)

例えばプラモデルを作るという作業について

➀注意(持続性注意、配分性注意)

②構成(平面ー立体)、上下左右の感覚

③耐久性

などが、分かりやすいところでしょう。

あとは、むちゃくちゃ細かい作業になるので、指先の感覚や筋力や、視力も考慮が必要ですね。また、組み上げた後に、設計図通りできているかを確かめたり、上手く組めない時にその原因を探る等、段取り良く作業を進める遂行機能なども必要になってくるでしょう。

的は、1つに絞る

ここで、大切な注意点。

いろいろな作業に、いろいろな高次脳機能が影響していることはお伝えしました。

が、じつは「リハビリ」として取り組む場合には、「ここに注意して取り組もう」という的を、いくつも設定しておくのは、あまりお勧めできません。

先ほどのガンプラの例で行くと、確かにいろいろな高次脳機能が必要な作業ですが、特に、トレーニングとして取り組む場合には

「今日は、ここに気を付けて取り組もう」

ということを、1つに絞ることが大切です。

今日は「持続性注意(集中力を途切れさせない)に取り組む」とするのであれば、その時は、あくまでそれ1つを目標にしておくことが大切です。
注意力も気を付けるけれど「空間構成の部分も気を付けて、組み間違いも少なくしよう」などと設定してしまうと、結局どっちつかずになってしまいます。

逆に「持続性注意」を今回の目標にするのであれば「30分続ける」とか、持続性注意に対しての目標を達成できたかどうかがポイントなので、それ以外の「右手と左手を組み間違えた」とか、そういう間違いについては気にしない、という事が肝要です。

まとめ

高次脳機能の自主練習について

・生活の中のさまざまな事がリハビリになる

・「この作業は、何のリハビリになるか」を考えてみる

・的を1つにしぼって、それ以外の部分で失敗しても気にしない!

ただし!

日常の生活はあくまでも皆さんの大事な日常です。

日常生活すべてが「リハビリ」「トレーニング」となってしまうのは、大変な負担です。
まるで、毎日テスト期間のような、そんな状況になってしまうでしょう。

自主トレをする時には、ON/OFFを明確に。十分なOFF時間を作るというのは、脳にとってもとても大事なので、「リハビリ」として取り組むとしても、1日1~2回程度にしておくのが良いのではないかと思います。

ABOUT ME
ひびたかまさ
ひびたかまさ
言語聴覚士/公認心理師/旅行介助士/臨床宗教師
生活の隣にいるSTを目指して、2022年に寺子屋ことだまを始める。
ことばのリハビリが主な仕事。
記事URLをコピーしました